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外国人配偶者が帰国したまま行方不明になった場合の離婚について 2022.05.18
トピックス

 国際結婚をされたご夫婦で、外国人配偶者が一方的に母国に帰国してしまい行方がわからなくなってしまったが、そのような相手と離婚することができるのか、というご相談を受けることがあります。

 

 配偶者の所在がわからないまま放置すると、結婚した状態は続きますので自分自身が再婚できないことはもちろんですが、将来ご自身が亡くなった際に、行方不明の配偶者にも相続権が発生するため、他の相続人にだけ財産を相続させることが困難になるとともに、遺産分割協議をすることもできず、相続手続が非常に複雑になります。

 

 そのため、婚姻関係を継続させる意思がないのであれば、行方不明の配偶者とはきちんと離婚をして、関係を終了させておくことが重要です。

 

 そのための離婚の方法ですが、協議離婚をする場合、当然ですが配偶者の方による署名押印がもらえなければ離婚はできません。

 

 また、離婚調停も、配偶者が家庭裁判所に出頭しなければ進めることはできません。

 

 そうすると、訴訟により離婚を求める以外に選択肢はありませんが、配偶者の所在さえもわからない場合に、訴訟で離婚することはできるのでしょうか。

 

 以下、国外で所在不明となっている外国人配偶者と訴訟で離婚をするための方法について解説します。

 

1 裁判管轄

 

 まず、外国にいるであろう外国人配偶者に対する離婚訴訟を日本で提起することができるのかという問題があります。いわゆる裁判管轄の問題ですが、離婚訴訟の裁判はどこの裁判所が管轄するかということは、「人事訴訟法」という法律で定められています。

 

人事訴訟法 第4条第1項

人事に関する訴えは、当該訴えに係る身分関係の当事者が普通裁判籍を有する地又はその死亡の時にこれを有した地を管轄する家庭裁判所の管轄に専属する。

 

 これは、わかりやすく言うと、裁判の当事者、すなわち原告(訴訟を提起する方)と被告(訴訟を提起される方)それぞれが住んでいる地域(当事者が死亡している場合には死亡時の住所地)の裁判所が管轄権を持つということです。

 

 しかしこれは、そもそも日本に裁判管轄がある場合の規定です。外国に居住する外国人が当事者の場合に、日本に裁判管轄があるかどうかは、以下の条文に規定があります。

 

人事訴訟法 第3条の2

人事に関する訴えは、次の各号のいずれかに該当するときは、日本の裁判所に提起することができる。
一 身分関係の当事者の一方に対する訴えであって、当該当事者の住所(住所がない場合又は住所が知れない場合には、居所)が日本国内にあるとき。
二 身分関係の当事者の双方に対する訴えであって、その一方又は双方の住所(住所がない場合又は住所が知れない場合には、居所)が日本国内にあるとき。
三 身分関係の当事者の一方からの訴えであって、他の一方がその死亡の時に日本国内に住所を有していたとき。
四 身分関係の当事者の双方が死亡し、その一方又は双方がその死亡の時に日本国内に住所を有していたとき。
五 身分関係の当事者の双方が日本の国籍を有するとき(その一方又は双方がその死亡の時に日本の国籍を有していたときを含む。)。
六 日本国内に住所がある身分関係の当事者の一方からの訴えであって、当該身分関係の当事者が最後の共通の住所を日本国内に有していたとき。
七 日本国内に住所がある身分関係の当事者の一方からの訴えであって、他の一方が行方不明であるとき、他の一方の住所がある国においてされた当該訴えに係る身分関係と同一の身分関係についての訴えに係る確定した判決が日本国で効力を有しないときその他の日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を図り、又は適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があると認められるとき。

 

 今回テーマにしている、母国に帰国してしまっている外国人配偶者の例では、以下の場合に日本の裁判所が裁判管轄を有することになります。

 

① 最後の共通の住所が日本国内にあった場合(第6号)
② 外国人配偶者が行方不明である場合、配偶者の母国での離婚裁判の判決が日本で効力を有しない場合、その他日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平や適正かつ迅速な審理の実現に資する特別な事情がある場合(第7号)

 

 もし、行方不明になった外国人配偶者と最後に同居していたのが日本国内なのであれば、問題なく日本の裁判所に離婚訴訟を提起することができます(第6号)。一方、最後の共通の住所が日本でなく、配偶者と最後に一緒に住んでいたのが外国である場合、それでも日本の裁判所に離婚訴訟を提起できるのは、日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平や適正かつ迅速な審理の実現に資する特別な事情がある場合に限られます。

 

 どのような場合がこれに該当するかというと、まず、訴訟を提起する者が日本に居住する日本人であることが前提となりますが、外国人配偶者がどこにいるのかわからない行方不明者であれば、認められることになるでしょう。訴訟の相手がどこにいるのかもわからなければ、日本以外の国で裁判をすることは難しく、また、可能であったとしても配偶者に送達ができなければ、そのような前提で出された離婚判決が日本で効力を有するものと認められない可能性が高く、日本での戸籍上の結婚を解消する方法がないからです。

 

 したがって、日本に居住する日本人が行方不明の外国人配偶者に対して離婚訴訟を提起する場合、最後の住所地が日本である場合はもちろん、そうでなくても(最後の住所地が海外であっても)、日本の裁判所が裁判管轄を有することになると考えられます。

 

2 公示送達を行うために

 

 離婚訴訟を日本の裁判所に提起することができるとしても、通常、訴訟では訴状を被告(外国人配偶者)に送達する必要があります。

 

 外国に居住する相手方に訴状を送達する国際送達は、最高裁判所を通じて外国当局に送達を行うため時間がかかります。最低でも2、3か月、長いと半年~1年程度かかることもあります。

 

 そして、配偶者が行方不明であると、国際送達は時間をかけたとしても完了しません。そこで、訴訟の相手方が行方不明の場合には、公示送達という方法で送達を行うことになります。

 

 公示送達とは、意思表示を相手方に到達させたいが、相手方の住所が分からないために意思表示を到達させることができない場合に、その意思表示を到達させるための手続です。具体的には、裁判所の敷地内に設置された掲示板に、当該相手方を名宛人とする公示送達の要旨と期日呼出状及び答弁書催告状が掲示されることになります。

 

 この掲示をして一定期間が経過すると、実際には相手方に訴状が送達されていなくても、法的には送達が完了したものとして裁判を進めることができます。掲示期間は、国内の公示送達では2週間ですが、外国においてすべきであった送達についてなされた公示送達の場合には、6週間が必要です(民事訴訟法第112条)。

 

 公示送達を行った場合、相手方が裁判所に掲示された公示を見ることはまずありませんので、それにもかかわらず裁判が行われることで受ける不利益は重大です。そのため、公示送達が認められるためには、相手方がどこにいるか十分な調査を行ったにもかかわらず住所がわからないということを、裁判所が納得できるような報告書の形で提出する必要があります。

 

 いわゆる調査報告書の形で住所の調査を報告するのですが、日本国内の場合、住民票上の住所や勤務先、その他相手方がいる可能性のある場所を実際に訪れ、そこに住んでいない、勤務していないということを、玄関先や郵便受けなどの写真と共に報告書にまとめる必要があります。しかし、相手方が外国にいる場合には、現地まで行って調査する必要はありません。

 

 まず、相手方が日本国内にはいないということを証明するために、出入国在留管理庁が管理している当該外国人配偶者の出入国記録を取り寄せ、最後に出国してから再度入国していないことを確認します。これは、一般の方が取り寄せようとしても得られない情報ですので、弁護士が代理人として弁護士会照会(弁護士法第23条の2照会)を使って照会します。

 

 弁護士照会では、外国人配偶者の外国人登録原票(平成24年に廃止されていますがそれ以前の記録は保管されています)も併せて取り寄せることが多いのですが、そこには、当該外国人配偶者の母国における住所が記載されており、その記載住所や、既に知れている外国人配偶者の外国における住所に宛てて、EMS(国際スピード郵便)等を使って郵便を送り、宛先の住所に受取人が尋ね当たらなかったことにより返送されたことを確認します。

 

 これにより、外国人配偶者が日本におらず、知りうる外国の住所に本人が住んでいないことが確認されれば、これ以上調査のしようがないため、公示送達が認められます。

 

 上記の内容を報告書にまとめ、公示送達申立書と共に裁判所に提出すると、公示送達が認められ、6週間の公示期間を経て、被告である外国人配偶者に対する訴状の送達がなされたものとみなされます。

 

3 離婚訴訟

 

 公示送達による離婚訴訟では、訴状に法律上の離婚原因を記載し、併せて原告である日本人配偶者の陳述書を作成して証拠として提出します。法律上の離婚原因は、民法第770条により定められています。

 

民法 第770条第1項

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

 

 外国人配偶者が帰国したまま行方不明になって3年以上が経過していれば、「配偶者の生死が三年以上明らかでないとき」(第3号)に該当し、それが外国人配偶者の一方的な帰国であれば「配偶者から悪意で遺棄されたとき」(第2号)にも該当します。

 

 また、帰国し行方不明になって3年が経過していなくても、帰国の経緯その他の事情により「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(第5号)にも該当する可能性があります。

 

 公示送達により離婚訴訟を提起する場合、被告である外国人配偶者が裁判期日に出頭することはまずないので、訴状と陳述書等の証拠資料により裁判所が法律上の離婚原因ありと判断すれば、第1回の口頭弁論で弁論は終結し、だいたい1か月以内に離婚を認める判決が出ます。

 

 そして2週間の控訴期間が経過することにより離婚は成立しますので、裁判所で確定証明書を取得し、判決正本と共に市役所等に提出することで、離婚したことが戸籍に反映されることになります。

 

4 まとめ

 

 外国人配偶者が一方的に母国に帰国してしまい行方がわからなくなってしまった場合でも、法律にしたがってきちんと手順を踏まなければなりませんが、確実に離婚をすることができます。

 

 その場合、公示送達を申し立てるための所在調査や、法律上の離婚原因を主張立証するための訴状の作成をするためには、弁護士による弁護士会照会制度の利用や法律の専門知識が不可欠ですので、離婚できずお困りの場合には弁護士に相談していただければと思います。

 

 もしご不明な点などありましたら、当事務所までお気軽にご連絡ください。